一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない
「入れ」
そう言われても立ち止まり続けている私の手を取り、鷹也さんは部屋に入った。
「……相変わらずきれいなままですね」
私は入るなりそう言ってため息を漏らす。
私がいなくても変わらない清潔に保たれた大きな5つのホール、4つの寝室、2つあるバスルーム。
それはお手伝いさんや、優秀な秘書たちが彼の周りにきちんといるからだ。
彼らは本当に全員優秀で、それぞれの役割をきちんと果たしている。
鷹也さんだってヒムロ・ヨーロッパホールディングス社長として自分の役割以上のことを果たしてる。
ーーーいつだって、何もできてないのは私だけだ。
だから鷹也さんだって……。
私が唇を噛んだ時、鷹也さんはまっすぐ私を見据える。
「離婚届は、もちろん出してないからな」
「……そうですか」
私は自分の手を握り締めると、鷹也さんに向かい合って頭を下げた。
「勝手に出て行ったことは謝ります。だから、改めて言います。離婚してくださいませんか」