一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない

「目、覚めた?」

 鷹也さんの裸の胸元に抱きしめられたまま、耳元で囁かれる声に目をぎゅうっと瞑る。
 それから慌ててふるふると首を横に振ると、いつもみたいに優しい笑い声が降ってきた。

「それは寝てる子の反応じゃないな」

 その声に心底ほっとする。
 昨日の夜とのギャップもあって、余計に安心した。

 昨日の夜の鷹也さんはいつもと違ってすごく怒ってて、私が素直に彼を欲するまで意地悪に翻弄するように私の身体に触れた。
 それからも何度も何度も、私に彼との情事を見せつけ、身体にも心にも嫌と言うほど、抱き合っている相手が自分であることを刻み込んだ。

(あんな意地悪されたのも初めてで……)

 いつだって私の身体を気遣って、恥ずかしがったらその気持ちを優先して、優しく抱いてくれる彼なのに……。

 でもそうされたことで、私は自分の心に着込んでいた鎧が何度も剥ぎ落とされて行ったのを感じていた。そして今、最後の一枚を脱がされた気がした。
 私はゆっくり口を開く。

「ごめ……」
「え?」

「ごめんなさい……勝手にいなくなって」

 その言葉をなんとか発すると、勝手に涙が頬を伝った。
 鷹也さんはそれを指ですくうと、私の目を捉える。

「いいよ、って言いたいけど、もう二度としないでくれ」

 そう厳しい口調で言われれば、私は頷くしかなかった。
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