一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない
ホテル近くのベーカリーで小さなクロワッサンだけを買って部屋に戻ったけど、なんだか食欲がなくて、それも食べずにすぐにベッドに飛びこんだ。日本に帰って来てからはいくら寝ても寝たりない。
これまでの睡眠不足を解消するように、ロクに食事もとらず、この一週間ほとんど寝ている気がする。
何も思い出したくない。考えたくない。
少しでも思考を自由にすればあの人のことばかり思い出してしまうのだ。
そんなことを考えていたら、またすぐにウトウトしてきた。
深い眠りに入る途中、彼の声が耳をかすめた気がした。
ーーー沙穂。
彼の声が私の名前を呼ぶと、私はいつだって幸せな気持ちになる。
何度も何度もその声が聞きたくなって、それから胸がぎゅうっと掴まれる。