一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない
私は冷めていくコーヒーを一口飲んで口を開いた。
「会社のほうはどう?」
「ヒムロのおかげで、藤製薬も順調すぎるほど順調。ヒムロと業務提携したって聞いた時は、本当に驚いたけど」
「うん」
ヒムロは、藤製薬のもつ特許に目をつけていたらしく、この結婚はそのことも含めた政略結婚だったと後で知った。
もともと政略結婚の覚悟はしてたし、正直に言えばそんなことであってもこんな身分差の大きな結婚はあまりない話だ。
「ヒムロのおかげで以前より研究費も莫大だし、全然研究できる規模が違うわよ」
そう言って遥は嬉しそうに微笑む。
遥は研究者として優秀だし、資源さえあれば喜んで結果を出す人間だ。
遥が新しく開発した薬にも、氷室会長が注目していると耳に挟んだ。
私もほっと胸をなでおろす。
「よかったぁ」
この結婚が、誰かの役に立てているなら、それが大好きな遥の役に立っているなら嬉しい。