一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない
15章:過去②(鷹也side)
それからなんとなく気にはなっていたけど、仕事も忙しくなって……。
ローマで社長に就任して、数年後……。
―――なんとローマで彼女に出会った。
セプティミウス・セウェルスの凱旋門の横で困っていた彼女をみて、とっさに身体が動いた。
少しは自分のことを覚えてないかと期待していたが、藤さんが言ったように、彼女はすっかり俺にした親切なんて覚えていないようだった。
実を言うと、それまでの間、時間があるときにふいに思い出しては藤製薬のことを調べていた。
そこで知ったのは、彼女が自分と同じように母親を亡くしていたこと。
いや、生まれてすぐ……自分よりもっと早くに母親を亡くしていた。
それから、彼女に関する悪い評判は全くと言っていいほどなかった。
そんなことを知るたびに、なんとなく彼女のことが気になり続けて、極めつけがこの出会い。
これはチャンスだ。
俺はチャンスが目の前に転がり込んできたとき、もうそのチャンスを逃す気がなかった。