高嶺の花の、君の隣にいられたら
プロローグ

記憶

「ボール返して!」
僕は精一杯の声を張り上げた。もう泣きそうだった。せっかく公園に遊びに来たのに、こんな目に遭うなんて。
「ほら、取り返してみなよ」
目の前の男の子たちがそう言って僕をいじめてくる。怖い。帰りたい。そう思っていたとき、
「何してんのよ!返しなさいよ!」
と女の子が飛び出してきて、一瞬のうちにボールを取リ返してくれた。そして僕の手を引っ張って、「あっち行こう」と囁く。僕が頷くと、彼女は走って僕をいつもの場所へ連れて行く。いつもの場所というのは、彼女の―僕の幼馴染み、紗理奈の家のすぐ近くにある小さな神社だ。僕らはそこに立つ大きな木の浮き出た木の根に腰掛けた。紗理奈は心配そうに
「大丈夫だった?ケガしてない?」
と僕に聞いてくれる。
「平気だよ。いつもごめん…」
そう答えると、紗理奈は僕の顔を覗き込んで言った。
「いいの!私、大きくなったら優人くんとケッコンするんだから!それで、ずーっと傍にいて、守ってあげる!」
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