second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
【Tachibana side 9:橘と恭矢と恭・・・3人の俺】
【Tachibana side 9:橘と恭矢と恭・・・3人の俺】
「まだ鈴鹿・・・伊勢ってこんなに遠かったんだ・・・」
『三重県って結構広いですよね。』
「うん。広いって改めて思ったけど・・ごめん、伊勢神宮に向かう時、ぐっすり眠ってしまって・・・」
『俺、運転するの、好きですから大丈夫です。』
「もう・・無理しないで。」
『・・・はいはい。』
午後6時。
伊勢神宮参拝から帰るクルマの渋滞の中にいる俺達。
鈴鹿と書かれている緑色の高速道路看板を通り過ぎる。
プライベートの時間に奥野さんとこんなに会話したのは初めて。
ごめん・・とか
無理しないで・・とかも
大学時代は憧れの存在
2年前、うちの病院に異動してきてからは、彼女のその仕事ぶりや振る舞いに尊敬する対象だった奥野さん
そんな彼女からの俺自身への気遣いの言葉が正直嬉しかったりする
現在の彼女の世界にプライベートな自分も存在しているのかもしれない
そんなことまで思ってしまう
「そういえば今朝のアイマスク、凄く気持ちよかった!ラベンダーの香りでホッとして、その上に目の周りが温められてすぐに眠くなったの・・・」
『貴重なご意見ありがとうございます・・・姉がアイマスク使った感想を教えろってうるさかったんですけど・・・俺、アイマスクを開封する前に寝落ちしてしまうので、姉をスルーしていたんで。』
「ダメじゃん。スルーとか。」
『アイマスクのPOPに書くオススメ感想を考えるのが面倒だから、俺に押し付けてるだけですよ。ドラッグストアの店長に怒られるからって・・・相変わらず困った姉です。』
「ふふ・・お姉さんの気持ち、わかるな~。橘クンならきちんとやってくれそうだもん。」
『わかっちゃったらダメですって。』
うちのダメ姉をフォローする奥野さんの笑い声はとてもナチュラル
姉を何とかしたい俺としては、彼女に姉へのダメ出しをしてほしいところ
でも、素の彼女を垣間見ることができるこの会話も楽しい
他人とプライベートな会話は苦手な俺
無理矢理それを求めてくる森村は別として、普段ほとんど口にしない俺なのに・・だ
このまま時が止まってくれればいい
イラつくはずのクルマの渋滞すらありがたい
いつもは一切そんなことを思わないのに、
今日は何度そう思ったんだろう?
でも現実はそんなことは絶対に起こらない
もちろん今日だってそうだ