second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
【Tachibana side 10:俺を操ろうとする小悪魔】
【Tachibana side 10:俺を操ろうとする小悪魔】
『寝坊どころか、やっと朝かよ・・・・』
奥野さんが俺の寝室から消えた後。
いつもセックスの後は爆睡する俺が朝まで眠れなかった。
『どこから間違えていたんだろうな、俺は・・・』
雅のココロもカラダも大切に抱いたつもりだった
でも、雅は俺から離れていった
自分の間違いがわからないどころか
何が正解なのかもわからない
『未練なんて、俺らしくないだろ。でも、雅の想いも大切にしたかったんだ。』
俺は寝室から出ていく雅を追いかけなかった自分をなんとか正当化することでようやく彼女の香りがまだ少しだけ残っていたベッドから出ることができた。
自分が勝手に想い描いていた雅との今朝。
『正月だし、雑煮でも作ろうとも思ったんだけどな。』
それとは異なる朝を迎えている。
冷蔵庫の中に雑煮を作れる材料もしっかりと入っていたのに、一人分の雑煮を作る気力なんかない。
結局、雑煮どころか朝食すら作りたいと思えなかった俺はシャワーを浴びて身支度を整えた後、引き出しを開ける。
その引き出しには趣味で集めた腕時計が収納されている。
俺にとっては、宝物箱みたいなその引き出し。
その中に一緒に入れてあるものを取り出す。
『俺がこれを拾ったのは、ただの偶然だったのか?』
昨年12月に手術室前の手洗い用洗面台で拾ったそれ。
『偶然とは思いたくない。』
俺はそれをぐっと握ることでようやくしっかりと足にも力が入るようになった。
その後、それをなくさないようにとケースに再び入れて引き出しをそっと閉めてから自宅を出た。
『昨日の夜、奥野さん、どうやって帰ったんだろう?』
クルマで病院に出勤する最中に思い浮かんだ疑問。
今頃それを思いついた自分の不手際にまた自分が情けなくなってハンドルをバンっと叩く。
それをしても何も変わらないのに。
病院駐車場に到着しても、白衣に着替えても平常心でいられない自分がいる。
「橘先生、処方箋!!!」
『は?・・佐藤さん・・・』
「今さっき、ジゴシン中止して、利尿剤でコントロールしようかなって言ってたじゃないですか!」
『あ~そうだったね。今、電子カルテに入力する。』
「もうお願いしますよ。橘先生がここまで集中していないなんて珍しいですけど。なんか無理していません?」
『すみません。大丈夫です。ちょっと顔、洗って出直します。』
「行ってらっしゃい。」
信頼しているNICUベテラン看護師佐藤さんにバシッと叱られ、ようやく目が覚めた。
その後はなんとかミスなく診療行為を行うことができた。