second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結


俺がこのふたりのやりとりの様子を最後に見たのは、分娩後、急変した彼女がICU(集中治療室)で治療されている時。
意識が戻っていない彼女の、血色が悪く白くなった指をそっと握って、頬に寄せた彼の姿。

そんな彼もあまりにも切なく見えた俺だったから、今の彼の様子を目にして改めて良かったと思わずにはいられない。

だから、つい俺は彼が彼女と電話でやりとりする姿を凝視してしまう。
それに気がついた彼は照れ臭そうな顔で俺に会釈しながら背を向けた。


「えっ?今、来ている?それは丁度いいな。」


臨床心理士探しの電話をしてくれているんじゃないのか?
仕方がない
奥さんと話をしているんだから、プライベートな話になってしまっても

とりあえず、俺、今日、休みだから
彼の時間が許すのならば話題が横道に逸れても大丈夫・・・

でも、ここの産婦人科はとにかく忙しすぎるって奥野さんもボヤいていたぐらいだから

のんびりと電話で話してる暇はホントはないのでは?

どうだろう?


「橘先生。今からお時間あります?」

『えっ?今日は僕、休みなので、時間はいくらでもありますが・・・』


逆に日詠先生は時間はあるのだろうか?
今日だって、何とか隙間時間に約束を入れてもらったって彼の秘書が言っていたけれど・・・


「今、丁度、うちに、名国大臨床心理専攻の斎藤名誉教授が来ているらしいんです。」

『斎藤名誉教授?・・・えっ?この病院に、ですか?』

「いえ、今はうち・・・私の自宅に。」

『は?日詠先生のご自宅に・・名誉教授が・・ですか?』

「ええ。うちの自宅に、です。」

『嘘・・・』

「ホントです。」


友人が遊びに来ているみたいなフランクな感じ
斎藤名誉教授という人を俺は知らないけれど、誰だ、それ

臨床心理専攻の教授がなんで日詠さんの自宅にいるんだ?
まあ、伶菜さんが臨床心理士だからなのか?
それにしても、教授がわざわざ家に来ないだろ?


「すみません、混乱させてしまったみたいで。」

『いえ、どういうご関係なのかな~って。』

「斎藤教授は伶菜の師匠で・・・彼はうちの子供達・・・祐希と陽菜を孫のように可愛がっていて、今日も彼らに会いに来てたみたいです。」


伶菜さんは息子の祐希くんを生んでから、臨床心理士を目指し大学院に通ったらしい
その頃、祐希くんを大学院に連れていくことも多かったようで、斎藤教授自ら祐希くんの遊び相手をしていたこともあったそうだ
現在も斎藤教授と日詠さん一家は家族ぐるみの付き合いとのこと

その斎藤教授が伶菜さんと共に、今、自分がいる南桜病院まで出向いてくれることになった。


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