second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結



廊下から見える景色。
冬の澄んだ空気のせいで、遠くにあるはずの高層ビル群の照明がとてもハッキリと見える。
その中の1つのビルにおいて、クリスマスツリーを模るように照明が燈されている。


『世の中、クリスマスなんだよね・・・・』


クリスマスというイベントから遠ざかって早数年。
なんでそんな日に働いているんだろう?という疑問すら抱かなくなった。


『しかも、呼び出しとか・・・。』

ようやく着いた屋上で溜息をつくと、真っ白な空気が風に乗ってひゅ~と流れていく。



寒っと肩を振るわせた瞬間、病院敷地内に救急車が入っていくのが見えた。

『交通事故?心筋梗塞?腹膜炎?あと・・・・・もしかして、妊婦さんの急変?!』

救急車で運ばれてきた患者さんがどんな患者さんなのか呟いている最中、白衣のポケットに入っていた院内PHSがけたたましい音を立てて鳴った。


『はぁ~。ウチか~・・・・・』


ピッ!


『はい、産婦人科、奥野です。』



橘クンとの待ち合わせとかクリスマスとかそんなことで占拠されつつあった頭の中を瞬時に切り替える



どんな妊婦さんなのか?

どんな状況なのか?

緊急手術とかが必要なのか、腕のいい麻酔医は今、待機しているのか?

NICU(新生児治療室)のベッドの空きがあるのか?


確認しなくてはならない事柄が次々出てくるのは、
産婦人科医師として月日を重ねた賜物



クリスマスだろうが、待ち合わせだろうが
今、あたしがすべき仕事は
この電話に該当する妊婦さんに安心してもらえるような仕事をすることなの


「もしもし、奥野先生?」



あれ?


この声は・・・・



【先生、NICUから、GCUへひとり移動できたので、スタンバイOKという連絡が来ました。】

【NICU運んだら、すぐに心エコーするからスタンバイしておくように伝えて。】

【わかりました。】



あれ?
PHSから救急車のサイレンの音がするけど・・・・




『もしかして、橘ク』

「奥野先生、すみません。今日、約束していたのに緊急対応が・・・」



声の主はやはり橘クン。
どうやら、今、病院の敷地内に入って来た救急車は、橘クンが同乗しているらしい。



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