second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
途中、廊下で奥野さんのPHSをコールしようと立ち止まった。
その瞬間に、クリスマスイルミの光に誘導されるように廊下の窓から見える病院屋上に目をやると、そこにはもういないと思っていた白衣姿の奥野さんがいて。
PHSへのコールをするのも忘れるぐらい急いでいる俺なのに新生児科ドクタールームへ立ち寄る。
『おい、杉本、冷蔵庫の中にあるもの、食うなよ。』
「橘先生の、ですか?凄く美味しそうですけど。」
『そう・・・だから腹減ったら、カップ麺でも食え。』
いつも冷蔵庫の中のものを無断で食う後輩医師の杉本にそう釘を刺し、代わりに自分のロッカーの中に常備してある旨塩味のカップ麺を彼に向けて放り投げた。
「いいんですか?橘先生の、夜食でしょ?」
『今日はいい。それどころじゃないし・・・』
俺はそう言いながら、ロッカーに入れておいたきれいにラッピングされているものを勢いよく破り開ける。
「それ、プレゼントでしょ?開けちゃうんですか?」
『今すぐに使うからな。』
「使うって・・・女性モノじゃないですか、それ。」
『・・・ああ、まあ、そんなとこだな。』
「へ~、橘さんもそういうことするんですね。女装とか・・・」
杉本は俺から受け取ったカップ麺を覆っているセロファンを手際良く開けながら、可笑しそうな顔で俺に問いかけてくる。
見ちゃいけないところに居合わせたけど面白い・・みたいな顔で。
『は?何だよ、それ。』
「違うんですか?だって、ピンク色ですよ。それ!!!!」
『違うだろ。これはだな、いつも寒空の下で白衣姿で空を眺めてる奥・・あっ!』
「奥・・・?なんすか、それ。」
完全に面白がり始めた杉本にもっとネタを与えそうだと悟った俺は
『奥・・・奥・・・そうそう・・・お前のデスクの奥に、ヤバイものを見つけたぞ。』
「えっ?バレた?今度、彼女と使おうと思っていたおもちゃ・・・うわ~、自宅で受け取るか、運送会社の営業所止めにしておけば良かった・・・」
もう少しのところで、奥野さんへのプレゼントであることを自ら暴露しそうだったが、逆にしばらく杉本のイジることのできそうなネタを得た。
実際は杉本のデスクなんて開けたことなんてないのだが。
『とりあえず、ちょっと席を外す。何かあったらPHSに連絡くれ。』
「了解です!今日はなんでも言うことを聞きます!!!!」
女装とかおもちゃとかトボけた杉本の言動のおかげで、ぎりぎりのところで奥野さんのことがバレずにすんだ