second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
病院の屋上入口から見える今晩の空は快晴。
点滅しているクリスマスイルミのせいで、いつもははっきり見えている星の輝き具合が鈍い。
『やっぱり、いた・・・』
星空の下、イルミの点滅の光に照らされながら、肩を震わせ腕組みをしている後ろ姿が視界に入る。
『・・・リアル裸足の女神・・・だな、奥野さんは・・・』
なんでクリスマスイヴに、奥野さんはそんな寒そうな格好でこんなところにいるんだろう?
もっと温かい夜を過ごしていても良さそうな人なのに
もういいんじゃないのか?
あなたがずっと想い続けた男の呪縛から解放されても・・・
でもそれはきっと簡単ではないだろう
長い間、同じ人を想い続けることをやめること
それが難しいことは俺もよくわかっている
想い続けている人を他の女に置き換えて抱いてやり過ごす
そんなことを長年続けてきた俺は
その想いをきっぱりとあきらめる術がわからない
だったら、あきらめるんじゃなくて
貫き通せばいいんじゃないか?
『女神が隠し続けている傷を曝け出して、受け止める・・・それを始めるのは多分・・今で・・それをするのは、絶対に・・・俺だ。』
日詠さんを想い続ける奥野さん
奥野さんを想い続ける俺
どちらかが変われば
どちらも変わるかもしれないから
『傷を隠さないでいい・・・裸足の女神は・・・』
今まで抱けなかったその想いに背中を押された俺は北風まで吹き始めた屋上で、一歩一歩、彼女に歩みを進める
そんな中、聞こえてきたのは
「ドクターカー対応だったから、時間かかるよね。もう戻ろう」
俺を待っていたけれど、見切りを付けようとしている溜息混じりの彼女の声。
この寒空の下、待たせてしまったことに対する申し訳なさ
それと同程度、いや、それを上回る・・・俺を待っていてくれていたことに対する嬉しさ
それらの相反する感情
『電話するって言いましたよね?』
「・・そうだけど・・・これ。」
『女性を守る産婦人科ドクターが体冷やして風邪でもひいたらダメですよ。』
「橘・・・クン・・」
俺はなんとか感情のバランスを取ろうと、いつものスマートな物言いをする自分を装って、それらの感情を隠そうとしてしまう
本当ならお待たせしてすみませんって伝えるべきなのに・・・
でも、俺にストールをかけられた奥野さんの、驚いて肩を竦めるという、いつも凛としている彼女らしくない後ろ姿を見て
『似合いますね、奥野さん。』
俺は正直な感想を口にせずにはいられなかった。