second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
『あ~、カラダ冷えちゃったし、医局で、カップ麺でも食べよ。』
だからクリスマスイヴでもいつものあたしでいようと、必死だった。
医局にあるあたしのデスクの引き出しに常備してあるカップ麺を食べることで。
それなのに、医局の自分のデスクの上にあったのは
『これ、何・・・?』
白い箱に入った、チョコ色の艶がかかったブッシュドノエル。
そして
黄色のメモ用紙に【メリークリスマス。やりすぎました。ごめんなさい。】と達筆な文字で書かれた、名前の書かれていないメッセージ。
『やりすぎました・・・とか・・・そんなこと、思っていたんだ・・・』
多分、この字は橘クンのもの。
キスした後もあまりにも涼しい気な雰囲気だった橘クンの、まさかのごめんなさいメッセージ。
『あたし、カップ麺、食べようと思っていたのに・・・』
あたしはすぐさまブッシュドノエルが入った箱の蓋を閉めて、それを両手で抱えて走った。
休憩時間に彼がよく居るはずの小児科のドクタールームへ。
『橘クン!!!』
勢い良く、小児科ドクタールームのドアを開けた。
でも、そこにいたのは
「奥野先生、急患ですか?」
『・・・いえ。』
「橘先生なら、今、コール対応へ向かいましたが。」
橘クンではない、あたしが食べようと思っていた銘柄の旨塩味カップ麺を片手に持っていた男性小児科ドクターだった。
『どうしよう・・・』
突然、あたしのデスクの上に置かれていたブッシュドノエル。
それをどうしたらいいのかわからず、衝動的に贈り主と思われる橘クンのところへ走ったけれど、彼はそこにはいなかった。
しかも、ひとりで食べきれる量ではないそれ。
今日の産婦人科の当直ドクターはあたしと、もうすぐ50才になる、糖質を控えているらしい産婦人科部長だけ。
さすがに部長の前で食べるわけにはいかないし・・・
「急用ですか?」
『あっ、いえ、ブッシュドノエルを・・・』
「ブッシュド・・なんでしたっけ?」
『あっ、いえ、いえ、急用じゃないのでいいです。失礼します。』
「あ~どうも。」
橘先生とのやりとりを探られたくなかったあたしは持っていたカップ麺を掲げて笑う彼に頭を下げてすぐさま医局に戻った。