second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結



『今日も冷えますね・・・奥野さんも当直だったんですね?今日。』

だから、敢えていつもの会話をする。
クリスマスイヴの後の初めての・・・彼女との会話でもあったから、余計なことを言わないように。

「・・うん・・・そう。」

それなのに、俺から視線を外してさっきのように前を向いた彼女。


やっぱりクリスマスイヴの俺の言動、まずかったか・・と密に自分にがっかりしていたその時。
彼女が再びこっちを向き、俺の背後が暗いままだったせいか俺と目が合わないうちに口を開いた。

「橘クン・・・これ、ありがと。あと、ブッスドノエルも美味しかった。ありがと!」

俺がプレゼントしたストールを両手で握って広げて見せてから、息継ぎをしないで一気にそれを言い切った彼女。
普段の業務中の、緊急時でも余裕のある雰囲気なはずの彼女らしくない。

『・・・ブッスドノエル・・・・』

言い間違いとかも珍しくて俺はつい言いなぞってしまった。


『あっ!!!!・・・・』


言い間違いを彼女自身も自覚して驚いたらしく。
俺は彼女らしくない困惑した顔までしっかり捉えてしまったことで、彼女のことを“押す”と意気込んでいた自分の緊張の糸がぷつんと切れた。


『ははは・・・ハハハ!!!!』

「・・・そんなに笑わなくても・・・」

『すみません・・・・かわいくて・・・』

「えっ?」

『・・・・・』

「・・・・・」


さっきは堪えたのに、緊張の糸が切れていた俺だったせいか、うっかり“かわいい”を口にしてしまった。

もうこうなると、次に何を言えばいいのかわからない俺は言葉を失う。
俺にかわいいと言われた奥野さんも黙ったままで。

彼女の様子が気になって顔を覗き込もうとしたその時、奥野さんも眉を下げてこっちを窺っている。

いつもはぴんと糸を張ったような緊張感の中でも余裕な雰囲気で患者に向き合っているこの人のこんな姿
かわいい・・以外になにがあるんだ?


ゴ~ン♪


お互いに顔を見合わせている中、聞こえてきた除夜の鐘の音。
その音がするほうに顔を向けた奥野さんに釣られて俺もその方へ目をやる。


ゴ~ン♪・・・ゴ~ン♪


こうやってその音を耳にするのは子供の頃以来の俺は、その音に耳を傾け始めた奥野さんの隣で自分もそれに聞き入った。
学生時代、高嶺の花という存在だった彼女の隣に、日詠さんではなく、自分がいることに密かに感動しながら。

今年こそ、彼女の隣にいることが自分にとって自然なことになって欲しい
そんな些細なことが愛おしい


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