second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
でも、そんな想いは俺の独りよがりな考えだったようで、
「ごめん・・何か気に障った?」
『いえ、そんなことないです。』
「でも・・・・」
『なんか自分なんかが見ちゃいけないような気になっちゃったんで・・・気にしないでください。』
逆に彼女に余計な心配をかけてしまった。
平常心ではいられないだろうと推測していた相手である奥野さんに。
情けないことに、新年早々、前に進むと意気込んだくせに自分自身の不手際で出鼻をくじかれた格好。
こんな気まずい状況になった今、初詣どころじゃないだろう
断られても仕方がない
今、ここでは“引く”べきというか
そういう計算すらすべきではないんだろう
やはり俺は、離れた場所から高嶺の花を眺める傍観者のほうがお似合いなんだろうな
例え、彼女の想い人が彼女の心の中から消えてしまう日が来たとしても・・・
「橘クン、あたし、初詣、行きたい。」
『えっ?』
「だから当直明け、初詣、行こ!」
耳を疑った。
彼女が見せようとくれていた動画を殆ど見ようとせずにスマホごと押し返すという失礼なことをした俺の誘いを受けてくれる
しかも、業務中はなかなか見られないレアな笑顔で。
新年早々、自分の不手際で自分自身にがっかりの気分な俺なのに
その笑顔で、簡単にその気分を変えられてしまった。
この人を変えようと思っていた俺なのに
俺がこの人に変えられているのか・・・?
『えっ・・あ・・・そうですね。わかりました。じゃあ・・・』
「今度こそ携帯電話に連絡する。仕事、終わったって。」
さっきはあんなかわいい顔を見せてくれたのに
いつもの冷静な応対に戻った彼女。
もっとあの笑顔を見ていたかったのに
仕方ない
仕事に戻らなきゃいけないんだから
『・・・あ~はい。電話ですね。』
プライベートな案件で彼女が自分から俺に電話するって言ってくれたこと
そんなことも初めてで、この時の俺はついニヤケそうになる口元を締めながらそう返事するのが精いっぱいだった。