second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
「奥野さん?」
『あっ、電話ね。』
「あと、これも。」
名刺を受け取った後に次に手渡されたのは、まだ温かさの残る缶コーヒー。
『缶コーヒー・・も?』
「ええ。ブラックでもよければ。まだ温かいですから。」
『ありがと。なんかあたしばかり貰ってばかりで。』
「そんなことないです。僕も貰っていますから、奥野さんから。」
『えっ?あたし、何かあげたっけ?何?』
「・・・頑張って想い出してみて下さい。それじゃ、俺、コールで呼ばれちゃったんで戻ります。」
クリスマスイヴの、“頭の中、俺でいっぱいにして下さい”に続く、あたしがあげたものを“頑張って想い出して下さい”という彼からの宿題。
クリスマスイヴの宿題もできている自信がないのに、更なる宿題。
『・・・想い出してみる・・・コレも、ありがと。』
その宿題に対してちょっと自信ないことを隠そうと、貰った缶コーヒーを掲げてそう言うと、彼はゆっくりと頷きながら、失礼しますと言ってあたしの前から立ち去った。
ちょっと余裕そうな彼から女性慣れしている空気を感じ、わかってはいたことだけど少し残念な気持ちになるあたしがいる。
『橘クンに何あげたか覚えていないあたしはもっと残念だよね・・。』
あたしはそう呟きながら、再び感じ始めた寒さで肩を震わせながら、彼の後を追うように屋上を後にして産婦人科病棟へ戻った。