second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結



『おめでとうございます。1月1日生まれですね!元気な男の子です。』


午前6時33分。
元旦の朝を分娩の診察で迎えた。
橘クンに何をあげたかをまだ想い出せないまま。



「・・・ありがとうございます・・・うれしいです・・・」

『血圧も心配していましたけれど、大丈夫そうです。』

「良かった・・・」

『喜びで目が冴えてしまうかもしれませんが、陣痛から分娩に向かう時間が長く、体力消耗しているので、少し休んで下さいね。』

「・・・はい。」


あたしが気にかけていた妊娠高血圧症候群に罹患した妊婦さんも無事に分娩を終えてホッとした表情をしている。
助産師に引き続き血圧のモニタリングの継続を指示し、出勤してきた医師にも入院中の患者さんの申し送りをして当直を終えた。


『帰って寝るか~・・・・』

当直明けのいつものセリフを今日も口にしながら更衣室のロッカーを開ける。

『違うじゃん。電話しなきゃ・・だよね。』

ロッカーの中のハンガーにかけておいた桜色のストールに触れてから急いで着替えて、鞄からスマホを取り出しそれを手に持ったまま職員通用口へ走った。



『寒いけど、いい天気♪』

初日の出は見えなかったけれど、職員通用口から差し込む新年元旦の朝陽に目をしかめながら病院建物から出た。

『電話しなきゃ。今、どこにいるんだろう?まだ仕事中かな?』

手に握ったままだったスマホを掌の上においてじっと見つめる。

『でも、当直明けだから、残業しないよね?』

自分にそう言い聞かせて、昨晩手渡された名刺の裏側に書かれている電話番号をスマホに入力して、すぐさま通話ボタンにタッチする。

ツー・ツー・ツー


『電話中・・・』


プライベート用のスマホが通話中ということは多分仕事は終わっているはずだからと一度、電話を切る。
今、自分が立っているところ・・・病院職員通用口付近には自動販売機以外に何もなく、やることのないあたしは背伸びをする。

それでも落ち着かないあたしは、電話を切ってからそんなに時間が経っていないにも関わらず、また橘クンのスマホをコールする。

案の定、通話中継続。


『どれだけ焦ってるのよ、あたしは。』

いつものあたしなら電話中の相手先への再電話は、いったん電話を手放し、他のことをしてからすることがほとんど。
自宅にいるなら、食器の後片付けやお風呂掃除をしてからなど。
外出中なら、スマホの検索サイトを開いて、今日のニュースに目を通してから。
同じ外出中の今、そうすればいいのに、それすらしようとしないあたしがいる。


『・・・楽しみにしてる・・・?のかな・・・初詣を・・・あたし。』



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