second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
本当は当直明けで自宅に帰って寝るはずだったのに
寝ないで外出するとか・・・いつ以来なんだろう?
『そういえば、あたし、橘クンに何あげたんだろう?・・・それになんで日詠クン達の動画を見せた時に、橘クン、なんで元気なかったんだろう?』
そんなことを想い出すも、電話をしなきゃいけないことのほうが気になるあたしは再度、通話履歴にある不在表示のある橘クンの番号をタッチして通話ボタンを押す。
ツー・ツー・ツー
『まただ。きっと忙しいんだよね。』
やっぱり落ち着かないあたしは意味もなく体をくるりと反転させると、昨日の夜、橘クンから貰った缶コーヒーもならんでいる自動販売機が目に入った。
昨晩、冷えた体をほんのりと温めてくれた缶コーヒー
橘クンはなんでこうもあたしを温めてくれるものばかりをくれるんだろう?
あたしが彼にあげたもの・・まだ想い出せないや・・・
『とりあえず、お返ししなきゃ・・・・微糖もあるけど、ブラックでいいよね?』
あたしは未だに電話が繋がらず、すぐに会えるかわからない彼へ、彼が買ってくれたホットのブラック缶コーヒーを2本買ってみた。
クルマの中で一緒に飲もうと思って。
『そろそろ、電話終わったかな?』
買ったばかりの缶コーヒーをポケットに入れてからもう一度通話ボタンをタッチする。
トゥルルル~・トゥルルル~・・・・
『今度は電話の傍にいない?』
それでも、発信音を自分から切ることができないあたしだったけれど、発信音が途切れて、ガサコソという雑音が聞こえてきた。
『・・・もしもし・・・橘クン?』
≪あっ、ハイ。≫
「よかった、やっと電話、繋がった!!!!」
≪・・・やっと・・ですか?≫
ようやく繋がった電話に安堵した。
それとは対照的に不思議そうにそう応答した彼。
「そう。さっきから橘クンのケータイに電話していたんだけど、ずっと電話中だったみたいで・・・」
電話が繋がらなかったことを彼にわかって欲しいあたしはそうやって説明をしたのに、電話の向こう側でクスっと笑う声が聞こえる。
笑うなんてちょっと酷い
こんなにも落ち着かなかったのに!
喉元までそれらの言葉が昇りかけていたあたしに
≪・・・奥野さんも電話中だったんですね。≫
『・・・あたし・・・も・・・?』
≪俺もかけていました。奥野さんに。着信履歴に残っていた奥野さんと思われる電話番号に。≫
『そうなの?』
≪ええ。電話中なら仕事は上がっているのかなと思って。≫
『・・・・・・』
彼が自分と同じ行動をしていたことに驚いた。
しかも電話中なら仕事は終わっているという解釈までも。
≪仕事終わっていて良かったです。クルマを持ってくるので、職員出入口で待っていてもらえますか?≫
驚きすぎて言葉を失うあたしの電話の向こう側でさらりとその言葉を発した彼は至って冷静に感じる。
仕事をしている時となんら変わらないのでは?・・・と思うぐらいに。
「・・・わかった。待ってる。」
彼とは正反対に仕事の時よりも完全に頭が回っていないあたしはそう返事して苦笑いするしかなかった。