second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
ついさっきまであたしに安堵した表情を見せていた彼のそれが曇る。
今日という楽しかった日が終わるから、彼に自分が知りたかったことを聞いてもいいなんて考えはあまりにも独りよがりだったことを反省する。
『ごめん・・・今の話、もう忘れて・・・』
「・・・元気がなかったんじゃないんです。」
『・・・違ったの・・・?』
「ええ。」
『じゃあ、なんで、あんなこと・・・』
あんなこと。
それはあたしが日詠クンと伶菜ちゃんの結婚式の動画が映し出されたスマホを彼に差し出した時に、彼はあたしにそれを押し返してきたこと。
でも、それをはっきりと言葉にすることはできなかった。
それは彼の触れてはいけないことのように思われたから。
「・・・・・・・」
でも、あたしの余計な“あんなこと”の一言で彼にはあたしが聞きたいことが伝わっていたようで、彼は俯いてふうっと小さくひとつ息を吐いてからあたしのほうを向いた。
「昨日、奥野さんが俺に見せてくれようとした動画、今、俺に見せて下さい。」
『えっ?』
「そうすればわかりますよ。だから一緒に見ましょう、今。」
『でも・・・』
「いいから、早く!」
初めてかもしれない。
彼がこうやってあたしに語気を強めて何かを求めてくることは。
彼の心を揺らしてしまったかもしれないその動画を今、彼に見せることが本当に正しいことなのかわからなかった。
でも、ここであたしがそれを拒否しても、今のこの気まずい雰囲気が好転するとは思えなかったあたしは鞄からスマホを取り出し、その動画を映し出して彼に差し出した。
「こうやって一緒に見ましょう。動画を。」
彼はあたしの手首を軽く掴み、ふたりでスマホを見ることのできる位置に動かしてその手を離す。
あたしの手の中で映し出されているのは、クリスマスイヴに仮眠室ベッドの中で見た日詠クン達の結婚式の様子。
【伶菜ちゃん、おめでと~う!!!!】
《ありがとうございます・・・こんなにも温かい皆さんに囲まれて幸せです。》
【日詠先生、伶菜さんのこと、見過ぎ!!!!いくら伶菜さんが美しすぎるからって!】
《今日ぐらいは見逃して下さい。おかげ様で幸せなんで。》
分娩時、生死を彷徨った伶菜ちゃんと彼女をずっと傍で苦しそうな表情で見守っていた日詠クンの最高に幸せそうな姿を見たのはこれで2度目。
2度目なのに、涙が頬を伝う。