second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
『あれっ?1回観てるはずなのに、なんで・・・』
「・・・・・・」
まだ動画を最後まで見終わっていないのに、彼があたしのほうをじっと見つめている気配を感じる。
『嬉し涙って何度でも出るんだね・・・・』
「そうじゃない。」
『えっ?』
彼のその言葉に驚いたあたしはようやく彼と目を合わせる。
否定された涙を止めたいのに、さらに溢れてきてしまい、手で必死に拭おうとすると、その手を彼の手で制止された。
「嬉し涙なんかじゃない。それは。」
『そんなこと・・・ない。だって、伶菜ちゃんも・・・日詠クンも・・・ふたり・・・ふたりとも・・・幸せそうじゃない!!!!』
「それは自覚した涙・・・日詠さんのことを本当に諦めなきゃいけないって。だから俺はあなたにその動画を見せたくなかった。奥野さんに切なくて苦しい想いなんてさせたくなかったから。」
彼の言葉を否定しながらも頬を伝い続けるあたしの涙を彼は彼の親指で拭ってくれてから、
「でも、忘れさせてあげます。そんな想い。」
『えっ?』
「今日はまだ終わってない。だからそんな夜があってもいい。肌に触れられて、拭い切れない切なくて苦しい想いを飛ばす夜があっても。」
彼はそう言いながら、涙を拭ってくれた親指をすうっとあたしの右頬上で滑らせてから大きな手のひらでそこを包むように触れた。
『それって・・・』
“肌に触れられて、拭い切れない切なくて苦しい想いを飛ばす”
彼のその言葉はきっと、“抱かれることで忘れろ”という意味なんだろう
「雅さんをひとりで今夜という時間を過ごさせたくない。今日、傍にいた俺は。」
本当なら当直明けに寝て過ごして、お正月なのに何やっているんだろう?ってがっかりする今日を過ごすはずだった
でも、橘クンのおかげで、楽しくて癒される今日を過ごすことができた
それなのに、あたしは日詠クンを忘れるために、橘クンに抱かれるなんて・・・
そこまで橘クンを利用するような真似なんかできない
そう思ったあたしは
『橘クンにそこまで大切にされる資格、あたしにはない・・・だってあたしは日詠クンのことを忘れるために好きでもない人に抱かれている。人肌が恋しくて・・・情けないけど。だから・・・』
自分の醜い部分をはっきりと晒し出してまで、彼に抱かれる夜を拒んだ。
あたしに貴重な1日を与えてくれた橘クンを
好きでもないのにあたしを抱く男達=セフレと同じ扱いなんかにしたくない
そうも思ったから。