second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
そういう男達と向かう先はほぼ100%ホテル
前もってシティーホテルを予約している計画性のある男もいれば、モーテルでさっさと済ませようとする無計画な男もいた
それでも、その男達への好きという心が伴っていないあたしはそれでもよしとしていた
だからホテルに向かうクルマの中でも胸が疼くようなドキドキ感なんて一切なかった
もちろん用が済んだら、あっさりとバイバイ
それもあたしなりに受け入れていて
そういうのがこれまでのあたしの、醜くて情けなくて寂しい女としての生き方だった
「ないですよ、何も。」
『・・・あっ、そうなんだ。』
「でも、そういえば・・・」
安心させられたのはほんの一瞬
今の話の流れだと、彼の、そういえばという言葉にビクビクしてしまうあたしがいる
彼の自宅へ行ったら、あたしではない女性が
お風呂上りでセクシーな下着を着て待っているとか
そういうのを彼は想い出したのかもしれないなんて思ってしまう
既視感のあるそんな妄想が今のあたしをビクつかせる
病院イチのモテ男の橘クンならあり得ないことではないかも
『あ、あるの?やっぱり。』
「・・・ええ。歯ブラシはちゃんとあります。普段から余分に買ってあるので。」
『は、歯ブラシ・・?!』
怪しい妄想が頭を過っていたあたしの声がひっくり返った“歯ブラシ”の復唱に、彼はクスっと笑う。
『もう・・笑わなくても・・・』
「かわいい勘違い・・・そういうの、これからはもうさせないですから安心してください。」
『・・・良かった。修羅場とかはもう・・・』
「・・・・・・」
うっかり口にしてしまった“修羅場”
さっき醜いあたしを晒してもそれを受け入れてくれた彼だったけれど、生々しいそのワードはさすがにドン引きさせてしまったのかもしれない
そんな反省をしていたのに、シフトレバーの上で繋がったままの手は彼によってもっと強く繋がる。
あたしに彼が繋がったままの手を介して大丈夫だと言ってくれているみたいで嬉しい。
その後もあたしと橘クンの繋がった手は離れることのないまま、クルマはマンションの駐車場へ入った。