second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
繋がったままの彼の手がピクリと動いたことで、彼がバックで駐車しようとしていることに気がついたあたし。
このまま手を繋いでいたらシフトレバーが動かせないからと彼の手から自分の手を離そうとした時、
「ちょっとこのまま待って。」
と彼に制止され、どうしたんだろう?と彼の様子を窺うと、
『・・・ん・・・』
目が合った彼から甘いキスを落とされてから、繋いでいた手をようやく離された。
いつも病院では、様々なことをクールにこなす彼なのに
今はありえないぐらい、いちいち甘い
手を繋ぐという行為がこんなにも甘いなんて、充分大人と言われる今の今まで知らなかった
明日、お互いに日勤なんだけど、もうこんなに甘やかされて、
どこまでが、彼との初詣なんだろう?
あたし、大丈夫なんだろうか?
そんなことを考えながらクルマを降りたら、また彼にさっと手を繋がれて彼の部屋まで手を引かれながら向かった。
マンションの狭いエレベーターに一緒に乗る。
彼は手慣れた手つきで8階のボタンを押す。
そこにはあたしと彼、ふたりきりで手を繋いだままだけどお互いに黙ったままで。
それがあたしの心臓の鼓動を速くする。
それを見抜かれないようにエレベーターの壁面に貼ってあるマンション居住者マナーのポスターに目をやると同時にエレベーターのドアが開いた。
「降りましょう。」
『う・・ん。』
相変わらず繋いだままの手をきゅっと握られて、もっと加速してしまうあたしの心臓
前を行く彼の表情は窺えないけれど、彼の耳が少し赤く見える
異性と手を繋いで彼の部屋に向かう
それは彼にとってはよくあることだろうから
この耳の赤さはきっとお正月特有の寒波による影響なんだろう
ガチャリ・・・
806と刻印されたプレートが掲げてあるドアの前で立ち止まった彼がドアの鍵を開けた音。それが静かな廊下に響く。
『・・・・・・』
本当に彼の部屋に来てしまった
約2年前、今の病院に異動してきて彼の部屋を訪れたのはもちろん初めて
あたしの中では、夜を共にする男は
・・・業務現場にいない人
・・・業務に支障が出ない人
って自分なりに線引きをしてきたはず
でも、多分、今から夜を共にするであろう橘クンは
前者は若干該当するかもしれないけれど
後者は、彼とは新生児のやり取りがあるんだから結構該当するかもしれない
しかも、あたしは日詠クンを忘れるために彼を利用しようとしている
そう考えるとこのまま彼に導かれてこの部屋に入っていいのかわからなくなる
今夜はこのまま彼と一緒に居ていいのかもしれない
でも明日からどうしていいのかわからなくなるかもしれない
なんといっても彼は同僚だから・・・