second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
「寒いから早く入りましょう。」
『・・・う・・ん。』
ドアを手で開けたままの彼の促しの声に返事をしながらも足が竦む。
ここまで来ているのに往生際が悪い自分。
こういうのも初めてで驚いてしまう。
「怖い・・ですか?」
心配そうにあたしの顔色を窺ってくれる彼。
処女でもないあたしにこんな声をかけてくれるのは彼ぐらい。
怖い?と問われるぐらい今のあたしは危なっかしくみえるのかもしれない。
『・・そんなこと・・・ない・・・』
「・・・俺は、正直怖いですよ・・・あなたを自分が壊してしまうかもしれないと思うと。」
正直怖いという彼の言葉
あたしをただ抱くだけの男である“恭矢”の言葉とは思えない
どうしても女を抱くという欲望しかない男の言葉とも思えないそれ
でも優秀な医師は臆病
自分の技量を過信しないから
だから最悪なことまでちゃんと考えた上で決断をする
救いたい患者であればあるほど慎重になる
多分、目の前の彼もそういう人間
「でも、変わらないほうがもっと怖い。俺も、あなたも・・」
『・・・・・・・』
「だから、明日のことは明日、考えればいい・・・だから今夜だけでいい・・・俺を・・・信じて下さい。」
日詠クンのことを諦めなきゃいけない
頭では充分わかっていて、他の男に抱かれて諦めようとしても変われていないあたし
今夜もそうかもしれない
でも、目の前にいる彼はこれまでの男とは違う・・・あたしを求めるその想いが
それを知ったあたしも怖くなった
いつもの男達とは異なる想いを持っている男・・・橘クンと向き合おうしているあたしも彼を壊してしまうかもしれないから
でも、彼の言う通り
明日のことは明日考えよう
そして
今夜だけは彼を信じてみよう
それがあたし、そして、彼が変わるきっかけになるのであれば・・・・
『・・・恭・・・』
大切にするという意味を持つ名前の彼を
あたしは今夜だけ信じてみる
「雅・・・」
『恭・・・』
「みや・・び・・・」
今、目の前にいる彼は
ただの同僚である“橘クン”でもなく
あたしをただ抱くだけの男である“恭矢”・・・でもなく
怖さという感情と大切にするという想いを併せ持つ、たったひとりの男性である・・・“恭”
玄関先で彼を“恭”と呼んだあたしを抱き寄せながらドアを閉めた彼は、耳元でもっと甘く“みやび”とあたしの名前を囁いてからあたしのカラダをぎゅっと抱きしめた。