恋と旧懐~兎な彼と私~
「あっこの子唯兎くんだ! ……じゃなくて暁くんだ」
「違うよ」
「いや分かってるよ。そうじゃなくて」
名前からそう思ったから,つい名前で言ってしまった。
言い直して,否定されて,私は笑う。
柔らかいピンク色のウサギは,やっぱり暁くんにそっくりだと思った。
「あの,私も……」
タイミング掴めなくて困ったけど,今なら自然に渡せるはず。
「なに? これ」
「えと,クリスマスだし……栞のプレゼントです。暁くんも本読むでしょ?」
高くないし,無難でいいかなと思って。
「……なんで知ってんの。俺愛深に会ってから学校で読んでたことないよね」
「そ,れは……秘密,です」
予想外の反応に,私は狼狽えた。
私が恋に落ちた日,暁くんが単行本を持って歩いてるのを見たから。
図書室の本じゃなくて,ブックカバーもついてたから,好きなのかと思って。
別れ際。
あいさつをする。
後ろ髪引かれる思いで背を向けると,頭の辺りを風が切ったような気がした。
「? 何かした?」
「い,いや……何も」
恥ずかしい。
気のせいだったみたい。
暁くんは何故か右手を見つめて茫然としている。
「えっと,じゃあね?」
「……待って」
今度こそっと背を向けて,今度は本当に呼び止められた。
「なんで……いや,なんでもない。じゃあね」
暁くんは結局何もいわずにスタスタと去っていく。
え、えぇ?
私も訳が分からないまま帰宅する。
その日の夜はすごく幸せで,夢見もよかった。
胸があたたかくなって,じんわりと,まるで雪が溶けたかのような透明の涙が零れる。
その手には,貰ったばかりの小さなマスコットが握られていた。
「違うよ」
「いや分かってるよ。そうじゃなくて」
名前からそう思ったから,つい名前で言ってしまった。
言い直して,否定されて,私は笑う。
柔らかいピンク色のウサギは,やっぱり暁くんにそっくりだと思った。
「あの,私も……」
タイミング掴めなくて困ったけど,今なら自然に渡せるはず。
「なに? これ」
「えと,クリスマスだし……栞のプレゼントです。暁くんも本読むでしょ?」
高くないし,無難でいいかなと思って。
「……なんで知ってんの。俺愛深に会ってから学校で読んでたことないよね」
「そ,れは……秘密,です」
予想外の反応に,私は狼狽えた。
私が恋に落ちた日,暁くんが単行本を持って歩いてるのを見たから。
図書室の本じゃなくて,ブックカバーもついてたから,好きなのかと思って。
別れ際。
あいさつをする。
後ろ髪引かれる思いで背を向けると,頭の辺りを風が切ったような気がした。
「? 何かした?」
「い,いや……何も」
恥ずかしい。
気のせいだったみたい。
暁くんは何故か右手を見つめて茫然としている。
「えっと,じゃあね?」
「……待って」
今度こそっと背を向けて,今度は本当に呼び止められた。
「なんで……いや,なんでもない。じゃあね」
暁くんは結局何もいわずにスタスタと去っていく。
え、えぇ?
私も訳が分からないまま帰宅する。
その日の夜はすごく幸せで,夢見もよかった。
胸があたたかくなって,じんわりと,まるで雪が溶けたかのような透明の涙が零れる。
その手には,貰ったばかりの小さなマスコットが握られていた。