恋と旧懐~兎な彼と私~
「仏壇,見た?」

「うん……でも,矢島さんのところに行ったときから,そんな気はしてた」

「知ってる。でも,愛深は聞かなかった」

「聞いて欲しかった?」

「いや,聞かないでくれて助かった」



ぼそぼそと,肩をくっつけて話す。

本題に入るための,準備みたいな会話。

暁くんが寝ている間に見つけた,散らかっている部屋の中で,唯一綺麗な空間にある仏壇。

遺影の若い男の人はきっと



「俺の,父さんだよ」



やっぱり。

笑っているその写真の人の目や口なんかに,面影がある。



「まぁ,俺が5つの時の話で,俺はあんまり気にしてないんだけど」



俺は,あんまり。

その言葉に,全てが詰まっているような気がした。


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