恋と旧懐~兎な彼と私~
私が暁くんを見上げると,暁くんはひどく驚いて,狼狽えるような表情をしていた。



「暁くん?」

「や,何でもない」



暁くんは今にも泣き出しそうな,子供のような目を伏せる。

何でもないわけない。

何か変なこと言ってしまった?

でも,どれだけ考えを働かせようと,今の私に踏み込んで良いことではないと思った。



「ね! 暁くん。お土産見に行っても良い?」

「ん,いいよ」



次に暁くんが顔をあげたとき,その目はもう,私の知る暁くんのものだった。

気付かれないように,ホッと息を吐く。



「……お土産屋さんってさ,変なちっちゃい人形とか買っちゃうよね」

「あっわかるっ! そうなの,日用品とか,沢山持ってるものでもつい買っちゃって…」



つい話に食いついた私ははっと気付く。



「キーホールダーとかも売ってるのかなっ?」



暁くんに,気を使わせたのかもしれなかった。



< 20 / 161 >

この作品をシェア

pagetop