恋と旧懐~兎な彼と私~
確かに,やっていることは変わらない気がする。



「ぅ,わかった。あり…がと」



いや,ほんとは分かってた。

ただ,素直になれなかっただけ。



「ん,それでいい。じゃあね,俺これからバイトだから」

「バイト?」



弘の家のカフェで,人手不足の日は駆り出されるらしい。



「忙しいのにごめんね。でも,ありがとう。すっごく楽しかったよ!」



私は両手を一杯に広げて表現する。

すると暁くんはまた笑って



「ふっ俺も。今度こそじゃあね,愛深。また来週」



帰り際のそれは,ちょっとずるいと思う。

あの時,誘えてよかった。

暁くんが来てくれて,あんな笑顔をみられるなんて,なんてラッキーなんだろう。



「あっつ」



赤くなっているであろう耳朶に触れると,じくじくと血液が流れる音がした。
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