恋と旧懐~兎な彼と私~
「いや,思ったより可愛いエピソードで安心した」       
             
「幼馴染み相手に可愛くないエピソードなんてあるわけないでしょ。気持ち悪いこと言わないで」       
          
「はいはい。ごめんごめん」
            

            
あしらおうとするな!  
            
私がむくれると弘は安心したように笑う。
          
              
             
「まぁ,唯兎のことは気にすんな。拗れに拗れて勝手に拗ねてるだけだから」
            
「ん,ありがと」     
             
        
   
こういう所が憎めないのだ弘は。
          
暁くんは結局,休み中に戻っては来なかった。
            
それはトイレに行った訳じゃない証明。
           
胸が,痛い。
            
一回避けられただけ。
            
会いたくなくなる瞬間なんて,誰にでもある。           
             
それでもこんなに胸が痛いのは,暁くんだから。         
             
暁くんはこんなにも,私の深いところにいる。           
               
私が勝手に置いているだけだけど。
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