恋と旧懐~兎な彼と私~
「昨日の,誰」

「昨日?」

「一緒にいたでしょ,男と」

「前言ってた幼馴染みだよ」

「すきなの?」

「っなんでそうなるの!!」



暁くん相手に怒鳴って,瞳が揺れる。
 
暁くんも,驚いた顔をした。

人に怒鳴ったのなんて,3歳ぶりかも知れなかった。

雫がこぼれないように目をパチパチして堪える。

そしてまた私はすぐに落ち着いて,ゆっくり考えた。

思ったより,私の気持ちは暁くんに届いてはいないのかもしれない。



「普段は気を使って言わないけど,私は暁くんが好きだよ。だから会いに行ってるの」



ちょっと嘘。

うっとおしがられたり,気持ち返せないって突き放されるのが嫌で,言わないだけ。



「…ごめん愛深。ちゃんと知ってる」

「そ,う」



それは何に対してのごめんだろう。

また,誰にも知られず心が揺れる。
< 60 / 161 >

この作品をシェア

pagetop