恋と旧懐~兎な彼と私~
それに,私が心配していたことも無用だった。

伊希は元々フットワーク軽いし,私と仲が良いことも,私以外の異性とも平気で遊びに行く人間だということも美愛は知っていたし,嫉妬とかする人でもなかった。

そして,小6の最後の日,ちょっとした影で,伊希はちゃんと告白してOKを貰っていたのを見た。

私もたまたま居合わせて,実は沢山の人がその様子を見ていた。

緊張した風に伊希が付き合ってくださいなんて似合わない敬語で言って。

美愛は上目遣いではにかみながら腰の辺りで○を作ると,はいと答えた。

その時の美愛ちゃんと言ったら本当に天使だった。

中3の塾の帰りの時には,伊希とこんな話をした。



『美愛のどこが好きなの?』



意地悪なんかじゃなくて,単純に分かりにくい伊希に聞いてみたかっただけ。



『可愛いじゃん。優しいし,頭良いし,それに,俺のこと分かってくれるとことかが好き』



思ったより,伊希は美愛が大好きで,私は嬉しくなった。



『だよね! 美愛はほんっとお茶目で可愛くて……それに美愛ちゃんは…』



呼び捨てとちゃん付けを行ったり来たりしながら私も語る。

またある時には



『俺,茉子(まこ)とか真由美(まゆみ)とかのあの辺がタイプ』



直前まで全然関係ない話をしていたのに,突然そう振られた。

茉子は中学に上がって初めてできた,真由美は小学生の頃からの友達。

ちょっと気まずくて。



『へ,え。なんで?』

『全体的に可愛くない?』

『それは……モデルとかみて思うのと同じ?』

『当たり前でしょ』
< 65 / 161 >

この作品をシェア

pagetop