恋と旧懐~兎な彼と私~
いっぱいいっぱい。

嫌な思い出。



『それに,先生に聞かなくても回りの子に頼ればいいでしょ?』

『だれにっ頼ればいいんですかっ』



シャボン玉がほんの少し浮いて割れるような,小さな爆発も。

そのまま初めて故意にサボった階段での,外の冷たい空気も。



『やめて 煩わしい』



初めての実害に,思いの外動揺した自分も。



『何で保険室?』

『おいっ無視してんじゃねーよ!』



耳を塞ぎたくなるような怒声も。



『愛深さんが好きです 悲しいときも嬉しいときも一緒にいたいです。放課後~で待ってます。付き合ってください♥️♥️ すきっすきすきっ』



よく分からない,推定女子二人による悪戯も。



『ごめんね』



進級間際にもなって知らぬまに置かれた,それを思い出した上で許さざるおえない手紙も。



『あっお前いじめられてんだって?』



デリカシーのない隣のクラスのバカ男も。



『……だれに聞いたの? ってか誰に? 私別にいじめられてないけど……思い当たることないし,あるとしたらただのいやがらせ』



意地っ張りな私も。



『愛深,今日男の子にごみ投げられたの?』

『はぁ? だれが言ったのそれ。仮にあったとしても私特に何も思わないし,何かの間違いだよ』


優しさだと勘違いさせて,本人が気付いているかは分からないけど,それでも確かに許可なく私の全てをぶち壊した教師も。



『愛深さん。愛深さんのことは聞いてるよ。ただ現場を押さえてその都度注意していかないとどうしよもできない。昨日の電話は愛深さん?』



数十秒すすりなくだけの電話を,数回もかけるような女だと勘違いした,侮辱しているとしか思えないあの教師も。

何の感慨もなかった進級式も。

その後の年からは友達みたいに振る舞ったあの沢山の敵だった人も。

始まる前から泣いちゃって,手のつけられなかった2年生の卒業式も。

楽しくて幸せだった3年生も。

さんざん独りで涙を堪えてた,週2のペースで泣くような生活をしてたあの夜の日々も。

全部全部……大好きで,大嫌いだ。
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