恋と旧懐~兎な彼と私~
「あぁ,わりぃな,愛深……」

「呼び捨てしないで」

「かといってちゃん付けしても言うんだろ」

「は? 当たり前でしょ。おっさんがちゃん付けとか普通にキモいから。青野さんとかで十分」

「お前まじでめんどくせぇのな」

「あの私は何でも」

「愛深は黙ってて」

「ははっ」



矢島さんは乾いた笑いを落とす。



「愛深,俺は矢島 圭介(やじま けいすけ)。唯兎とは,唯兎の父親と友達だったから,チビの頃からの付き合いだ」

「……そう,ですか」



強調されただったという言葉に引っ掛かった。

けど,他人が踏み込んでいいことでも,わざわざ掘り下げる様なことでもない予感がして,返したのはそれだけ。

結局呼び名は変えないらしい。



「なんだ,唯兎お前見る目あるな」

「は? うるさいし,勝手に試すような真似しないでくれる? ごめんね愛深」

「お前ほんとは嬉しんだろ」



今日はよく暁くんに名前を呼ばれる日だな。
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