恋と旧懐~兎な彼と私~
いつもは私が話しかけて,暁くんは答えるだけ。

だから普段はあんまり呼ばれなくて,勝手に心臓が変な動きを見せた。



「じゃあな。愛深,またいつでも来い。唯兎も。唯兎には出さねぇけど愛深には菓子くらい出してやるから」

「ふふっ。はい,また来ます」

「いやだめでしょ。何軽々しく頷いてんの。怪しいおっさんに騙されちゃだめ」

「お前連れてきといてそれは」

「矢島のおっさんも,若い子ナンパしようとしてたってチクっとくから」

「は!? ふざけんなおま」



帰りもわちゃわちゃとする2人は,微笑ましい。

普段見れない暁くんが見れて,私も嬉しい。



「来るなら俺とにしてね」



移動するとき,そんなことを言われた。

誘ってもいいってことかな。



「分かった」



絶対にばれちゃいけない顔の赤みは,うつむいて隠した。
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