鬼弁護士は私を甘やかして離さない
私は毎日電車に乗り職場である法律事務所へ1時間かけて通勤する。

大学の頃から住んでいたアパートは斗真と別れてからすぐに引っ越した。
斗真との幸せな思い出が辛くて耐えられなかった。

初めてできた彼。
何もかも彼と経験した。
私を優しくリードし、甘えさせてくれた。
同い年とは思えない包容力があった。
周りに羨ましがられるほどの彼だった。
私は彼の見た目以上に中身が大好きだった。

斗真のついた嘘で別れてしまったことを美沙に話すと「どうして斗真の話を聞いてから決めなかったのか」と何度も言われた。
美沙には斗真と結婚するって伝えていたから美沙も驚いていた。

でも私には昨日今日じゃない積み重ねてきた日々が全て嘘に思えてしまったから斗真を信用できなくなってしまったと伝えると美沙はそれ以上何も言わなかった。

新しいマンションは今までの大学に近いだけのところから少し便利なところになった。
通勤に1時間かかるが自立した今の自分の身の丈に合う、でも自分の城と思えるようなところで日当たりの良い場所を選んだ。

ガラリと場所を変えたせいか全てが目新しかったが、物だけが変わっても私の中の何かが足りない……。
何が足りないのかは分かってるけど、気がつきたくなかった。
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