鬼弁護士は私を甘やかして離さない
朝、目が覚めると隣で恵介が私の顔を見ていた。

驚いて声にならないでいると恵介は笑いながら声をかけてきた。

「おはよう。よく寝れた?」

「お、おはよ」

シーツに包まれただけの私の身体を恵介は引き寄せた。
恵介の素肌の感触に昨日の夜のことが生々しく思い出された。

恥ずかしくなり、恵介の胸に顔を埋めると頭の上から「真衣は朝起きても可愛い」と言われる。

「恵介に可愛いと言われるたび恥ずかしくなる」

「どうして?」

「恵介はみんなの目をひくような容姿だけど私はそんなんじゃないもん。何もかも普通すぎて、恵介に可愛いと言ってもらえるような容姿じゃないって分かってるから」

「バカだな。真衣は可愛い。みんなも気がついてるからヒヤヒヤしてたくらいだ。昨日の元カレといい、真衣にはヒヤヒヤさせられっぱなしなんだ」

そういうとギュッと抱きしめられた。

「でもこうしてここにいる。俺は真衣を大事にするから」

「うん。恵介。私のことを見つけてくれてありがとう」

ベッドの中でイチャイチャしていると部屋の向こうでスマホが鳴るのが聞こえた。

「あ……仕事だ。最悪だ。事務所からの着信だ」

音でわかるのか、頭をかきながらベッドから出ていった。
少し不機嫌そうな声で応対している声が聞こえた。

「はい、咲坂です。はい。はい、わかりました。事務所に向かいます」

そういうとスマホをソファに放り投げた。

ベッドへ戻ってくると、

「ごめん、真衣。依頼者が事務所に来てるらしい。緊急の案件だと」

「わかりました。すぐ支度しましょう」

そういうと私は身体を起こした。

身支度を整えると恵介は私を自宅に送り届けてくれた。
連絡するから、と言いそのまま車で走っていってしまった。

甘い夜だったなぁ。

私は斗真と再会したことも忘れるくらい恵介でいっぱいになった。

自宅でシャワーを浴び、明日からの仕事に備えてゆっくりしていると夜になって恵介からメッセージが届いた。

【今帰ったよ。明日からちょっとバタバタしそうだ。真衣も明日に備えてゆっくり休んで】

【おかえりなさい。お疲れ様でした。明日から何か大変なんですね。鬼が事務所にいませんように】

【甘いのと鬼とどっちがいい?真衣が選んでいいよ】

え?
選べるの?
でも甘くなったら……恵介のプライベートな顔をみんなが知ったらますますモテてしまいそう。
それに恵介に甘やかされるなんて仕事にちゃんと向き合ってきたのに私の努力が無になる気がした。

【いつも通りでお願いします】

【了解。また明日な。おやすみ】

【お休みなさい】

そう締めくくると私はベッドに入り込んだ。
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