鬼弁護士は私を甘やかして離さない
翌朝早く、恵介のマンションから持ち出した着替えやタオルなど身の回りのものを病院に届けてから出勤した。
つい先日恵介の洗濯をしていたから場所がわかり、すぐに支度を整えることができたのは不幸中の幸いだった。

恵介の分の仕事をみんなに振り分けているため、みんなの仕事量が格段に増えた。
私たちパラリーガルにもその影響は大きくなっていった。
そのため面会時間に間に合わず、初日以来会いにいけていない。
メッセージのやり取りだけは欠かさずしており、繋がれていた管は抜け歩き始めているとのことで安心している。
洗濯は時間外だが看護師に頼み受け渡しをお願いしている。
恵介には会えなくてもそばに行くことができるだけで嬉しかった。

「小林さん、5分だけいいですよ。あそこの自販機に咲坂さんいますよ」

「え?」

「ほら!」

そう言って若い看護師が背中を押してくれた。
病棟の電気は消えていたが自販機の場所だけ明るくなっていた。
私がそこにいくと恵介が自販機にもたれるように立っていた。

「恵介!!!」

「しっ!大きな声出したらダメだ」

私は慌てて口に手を当てた。
するとそのまま恵介に抱きしめられた。

「真衣……。いつもありがとう」

「恵介。身体はどう?痛い?」

「大丈夫。順調だ。後1週間で退院できる」

「良かった。本当に良かった」

私は涙声になりながら話すと恵介は更にぎゅっと抱きしめてきた。

「真衣。心配かけたな。ごめん」

「恵介が無事ならいいの。早く帰ってきて」

「あぁ。早く帰りたい。真衣不足だよ」

そういうと掠めるようにキスをしてきた。
私は慌てて周りを見渡すが誰もいない。

「バカ!見られたらどうするの」

「大丈夫。俺は見られても困らないから。でも家に帰ったら思いっきり真衣を補充させて」

私は恵介のパジャマを掴み、胸に顔を埋めた。

「うん」

小さな声で答えると頭に恵介のキスが落とされた。
看護師がくれた束の間の面会はあっという間に終わってしまった。
それでも私は十分に満たされた。

恵介が戻ってくるまでの1週間が待ち遠しかった。
< 35 / 41 >

この作品をシェア

pagetop