鬼弁護士は私を甘やかして離さない
働き始めて3年。

たまたま裁判所に提出する書類を出した帰り、私はそのまま直帰のため斗真を驚かそうと思いついた。連絡もせずに会社のエントランスが見えるところに立って斗真が出てくるのを待とうと思った。
斗真がいつもなら退勤する時間。
私はウキウキして斗真が会社から出てくるところを捕まえようとしていた。

木のそばに立ち入り口を見つめていたら後ろから声が聞こえてきた。

何気なく振り返ると、車から降りてきたと思われる数人が会社に入るところだった。
その中に斗真の姿があった。
斗真は先頭に立ち、年上の人を従えているように見えた。
その背後には黒塗りの車も見える。
もしかしてこの車から降りたの?
運転手が扉を閉めるところだった。

誰かのお付きで降りてきたわけでは無さそう。
斗真が先頭をきって歩いていたよね……。

3年目の斗真がなんで?
斗真は営業だった言ってたよね。
どう見てもそうは見えず、私の目にはついてくる人たちは部下しか見えなかった。

すると駆け寄ってくる男性が斗真に声をかけた。

「九重専務。先程八島不動産から連絡が来て折り返し電話が欲しいそうです」

「わかった」

そういうと颯爽と自動ドアをくぐり抜け社内へ入って行ってしまった。

九重専務?
斗真が専務?
3年目なのに?

どうなってるのかわからなかった。

私は目の前の出来事に唖然として立ち尽くしてしまった。
ハッと我にかえり斗真へメッセージを送った。

【まだ会社?裁判所の帰りなんだけど斗真の会社のそばにいるの。会える?】

手が震えながら送るとすぐに返信は来なかった。

いつもなら忙しいのかな、仕事が終わってないのかな、と思うけど先程の会話からすると大切な電話中なのだろう。

私はフラフラと斗真の会社から駅へと向かった。
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