義理の兄妹で恋をするのはフィクションの世界だけだと思っていた
そして…。
「俺、のんちゃんと本当の家族になりたい」
「っ! 世間体的に考えて絶対に無理だからー!!」
高校3年生、それぞれの卒業後の進路も決まり、安堵している時期。
思ったことが口をついて出てしまった今、告白よりもプロポーズが先行した。
「世間体、気にしなければ良いんだ?」
「いやいやっ…!そういう意味ではなく…!」
「俺のこと嫌い?」
「っ……人として…好きだけど…」
人として好きなら希望はある。食い下がるように俺は…。
「じゃあ、今日から俺と付き合って!お試し期間!頑張るから…!男として好きになってよ」
あと少しで大学生という歳になって…。
(幼稚でも…なりふり構ってられない)
「………強引でごめん。でも…本気だよ。」
「………」
「その…だから…」
あぁ、かっこ悪い。
歯切れが悪いし、変に声も上擦って…。
そしてこの告白はただの焦燥感だ。
「…………」
大学で離れ離れになる、と思う。
(…具体的な場所を訊けないのは…ひよってるからなんだけど…)
「………前よりは仲良くなれてると思ってる。でも、いつか俺のそばからのんちゃんがいなくなると思うとものすごく……寂しいし…」
「………私の進路に関して何も聞いて来ないくせに、『仲良くなれてる』わけないじゃん。私には無関心だったくせに。」
心の中を覗き込まれてるみたいな発言に、痛いところ突かれたと、一瞬だけヒヤッとした。
「……それは…その…」
「まあ、別に良いけど。私も訊かなかったし…。」
この距離感のまま…なのかな。同じ屋根の下で暮らしてても、所詮、血は繋がってないし赤の他人。所詮、俺の片想いで……。
「………いや、向き合うことが怖くて逃げていただけだ。」
「え…?」
「……離れるって確信を持つのが怖かった。だから訊けなかった。毎日モヤモヤしてた…!」
自分を曝け出すのはものすごく…。
「恥ずかしぃー…。ごめん、ストーカー気質だわ…」
「っ……そんな風に思ってない…けど…」
リビングのカーペットの上で項垂れている俺の顔を覗き込むように、のんちゃんは距離を詰めてくる。緊張して、うるさい心臓に心の中で呆れながら…虫の鳴くような声で…。
「………好…」
《ガチャ!》
「ただいま〜」
呑気な父親が帰宅する。
「…っ…おかえりなさい!」
のんちゃんの切り替えの速さに置いてけぼりを喰らい、大きく深呼吸した。
(好きって言えなかった…!!!)
心中で号泣したのは言うまでもない。
「のの、合格おめでとう。連絡来た時、ものすごく嬉しかった。」
「え…!合格!?」
「うん。」
「まさか駆、訊いてなかったのか? 駆と同じ大学受けてたのに。」
「………」
(今、親父『同じ大学』って言った?)
予想外の出来事に頭が回らなかった。
「学部違うけどね。駆くん理工で私は経済だし。」
少しは自惚れても良いんだろうか。
嫌われてないって思っても良いんだろうか。
「………のんちゃん、都会に1人で住むのは心配だし、2人で一緒に住もう!」
「………………ん?」
「おぉ、それだと俺も母さんも安心だ。家賃と光熱費が浮きそうだしな。」
「ちょっ…!お父さん…!」
「せっかく同じところ受かったし!キャンパスも一緒じゃん?」
ポカン、としているのんちゃんを無視して、勝手に親父と話を進める。
一緒に住むのなんて今までだってそうだったし、今更拒まれる理由も…。
たくさん思いつくけど…!
「のんちゃんは俺が守る!」
バチが当たっても良いや。