義理の兄妹で恋をするのはフィクションの世界だけだと思っていた
4月。入学式も終えて第1週目の一番心躍る期間。
何の授業を受けようか悩みながら、ダイニングでシラバスをぼんやり眺めていると…。
「それ、総合科目の論理学? 俺も受けるか悩んでたんだけど」
背後からテーブルに手をついて、駆くんが覗き込んできた。
「仲良くなった子、誰も受けないって言うから悩んでるんだよね。いざ、風邪ひいて休んだ時とか……頼れる人がいた方が心強いし。」
「俺もそんな感じ。一緒に受けてくれる人いないかなって探してた」
明るい性格の駆くんのことだ。きっと大学入って、すぐに友達ができたんだろうな。
「………駆くんは誰かしら声掛ければすぐに一緒に受けてくれる人見つかるよ。」
「そう?」
「うん」
私とは違う人。無難に、とか、普通に、とかを好むような私にできた友人は2人。向こうから話しかけてきてくれたおかげで親しくなった。
自分から話しかける勇気も持ってないような私には、駆くんがものすごく眩しい。
「………のんちゃんがいい。」
眩しくて手が届かないような…そんな人。
「…のんちゃんと一緒に受けたいな。……そうすれば一緒に課題できるかも!」
なのに駆くんはいつも、私を放っておいてくれない。
「………私でいいの…?」
「のんちゃんがいい。」
頬が熱く火照る。気まずく感じるのに目が逸らせなかった。
まるで告白されてるみたいで、全身が心臓になったような感覚。
「………明日の授業前、噴水のところに集合ね。」
優しい声と、視線に、きっと私は抗うことはできないんだと思う。