義理の兄妹で恋をするのはフィクションの世界だけだと思っていた
駆side
あっという間に90分。
後半、眠たそうにしていたのんちゃんは今ではすっかり目が覚めているように見える。
「のんちゃん、眠たそうだったね。」
帰り道。駅に到着し、人混みに紛れながら改札機にICカードを翳(かざ)す。
「飴、なめればよかったのに。もしかして嫌いだった?」
「ううん!嫌いじゃない」
食い気味に否定して、のんちゃんはホームへと続く階段を降り始めた。
「……本当に眠気が限界って時のためにとっておきたくて」
「買いに行く? あの飴、学食で当たったから貰ったんだよね」
「あの券売機って当たり付きなんだ」
「買った時に券と別に真っ白な券が出てくるんだよ。故障かと思って学食の人に言ったら飴くれた。」
運がいい日。というか、今日は良い日だ。
のんちゃんと久々に一緒に授業を受けることができて、一緒に帰れて…。心が浮き足立っていた。
「……この飴、半分こできればいいのにね」
「………」
「シェアできないのが飴の弱点だよね!せっかく当てたのを私だけが舐めるのもなぁ…」
思ったことをそのまま口走るタイプの人だから、きっとこれには深い意味はないんだろうけど…。
脳裏で想像してしまう。
『まもなく準特急、橋本行きが1番ホームに参ります。黄色い線の内側までお下がりください。』
電車が来る。その吹き抜ける風でのんちゃんの髪が揺らいだ。
そして俺はと言うと、変に意識して綺麗な桜色の唇に視線を向けて生唾を呑む。
「……あるよ。一緒に味わう方法…」
「え?」
「もっと甘くなる飴の食べ方。………俺の欲望まみれの方法だけど…」
声が震える。緊張して、心臓もうるさく響く。
キスしながら、一緒に飴を味わうなんて卑猥な考え……そんなことできるわけないのに、望んでしまう自分はかなりのスケベだと思う。
自分の性欲の強さにため息をつく。そんな経験今までなかったのに。
「俺…最近もっともっとのんちゃんのこと欲しくてたまらないんだけど…。」
こんな風に、自分の気持ちを自分の欲望のままぶつけることも、なかったのに。
「……私…」
《プルルルルル》
のんちゃんが何か言いかけた時、電車が出発する合図が鳴り響き、急いで乗り込んだ。