義理の兄妹で恋をするのはフィクションの世界だけだと思っていた
晩御飯を作り終えて、2人で食事をする。本日の献立は鮭のホイル焼き、白米、なめこの味噌汁、サニーレタスたっぷりのシーザーサラダだった。
どれも上出来。
頑張って作った甲斐がある味だ。
「駆くんの作った味噌汁、美味しい。優しい味がする。」
「薄い?」
「ううん。ちょうどいい。」
「………のんちゃんが喜んでくれるなら毎日でも作るよ」
好きな人が喜んでくれるなら頑張れる。我ながら単純な思考回路だと思う。
「駆くんってなんか犬みたいだよね。感情が全部表に出てる感じ。なんか困る。」
「犬…? そうかな…?」
突然の言葉に戸惑う。どう返すのが正解なんだろう。
「困るってなんで?」
パッと思い浮かんだ疑問をそのまま口にする。
「だって……接し方がわからないから…」
小さなか細い声でのんちゃんは言った。
(……期待しそう…)
真っ赤な顔してご飯を口に運んでは、ゆっくりと噛んでいる。頬が膨らんでいてハムスターみたいで可愛い。
とか、呑気に思ってる場合じゃなくて。
「……ねぇ、いっそのことさ…」
「…?」
「明日一日、俺の彼女になってみない?」
追い討ちをかけるなら今だ。
「えっ…彼女?!」
「1日デートしよう。明日休みだし!足りないもの買いに行かないとって話してたじゃん?」
「それはそうだけど…どっ………どうしていきなり彼女…?」
「なんか、今押すしかないって思って。」
変に隠し事するのは性に合わない。ズルい手法も、無傷で終われる逃げ道を作ることも自分には合わない。
心臓の大きな鼓動も、熱くなる頬も、何もかもが気にならないくらい必死だった。
「それで明日、少しでもいいかもって思ったらさ…」
「……」
「……俺と真剣に付き合って欲しい。」
好きだと自覚し、兄妹として過ごしてきて数年の時が経った今。
少しでも関係を発展させるために、震える声でなんとも弱々しい告白をした。