義理の兄妹で恋をするのはフィクションの世界だけだと思っていた
車を走らせて居酒屋の前に停める。
(酔い潰れてるってどういうこと?)
疑問ばかりが頭の中で反芻するから、焦燥感が充満していた。
《ガラガラ》
重たい扉をスライドさせて中に入ると、温かい色の照明が目に飛び込んでくる。そして、その瞬間、予想外の言葉が耳に入ってきた。
「彼氏が駆くんなんだよ!?私を選んでくれたことが本当に嬉しくて…!」
「………え?」
高校生の頃、頑なに周囲に自分たちのことを知られたくないと拒絶していた人が言ってると思えない言葉が耳に届く。
「本当に素敵な人なんだよね!でも、私たち兄妹だから…。結婚できるのかなぁ…」
グワっと羞恥心と喜びが身体中を駆け巡る。
「義理だったら結婚できるらしいよ。聞いたことある。」
「そうなの!?やったー!」
同級生とのんちゃんの会話を遮る勇気もなく、声をかけるにかけられない状態で立ち尽くしていると…。
「おっ!カケちゃんだ!」
「っ…は、早川?」
「水樹〜。カケちゃん、迎えにきたよ〜。」
唐突に声をかけられて、硬直する。目が泳いで、その視線の先にのんちゃんを捕らた時…。
「………わぁ〜…駆くん〜…」
(…………うわ…なにその可愛い顔…)
柔和な雰囲気でニヨニヨして笑うのんちゃん。破壊力は抜群で、今すぐにでも抱きしめて目一杯甘やかしたくなる。
「こんばんは。楽しんでるところ失礼します。」
「噂の駆くん?うわ、爽やかでイケメン!」
「だめだよ。ゆうちゃん。駆くんは私のだから〜」
言いたい放題な彼女を無視して、ペコペコと頭を下げながらのんちゃんの迎えにきたことを伝える。解散の時間に差し迫ったところで、一足先にのんちゃんを居酒屋から連れ出した。
車にエンジンをかけると、窓の外の友人に向かってニコニコしながら手を振る。冷やかしの目を全身で受けて、会釈してからその場を走り去った。
運転中、隣でずっとのんちゃんは…。
「うふふ〜…楽しかったの〜」
ホワホワしてる。頬は紅潮していて、眼はトロンと蕩けた目をしていた。
「駆くん…来てくれてありがとう〜」
「どういたしまして」
のんちゃんは久しぶりの飲みで沢山お酒を堪能したのか、すぐに規則正しい寝息を立てながら眠りにつく。
「………」
自分の気持ちも考えてほしいものだ。