風雅堂異談
「確かに、お前の主人を殺した奴は悪い。が、その子孫には何の罪も無い。またその子孫にも家族は沢山いる。子孫に対し恨みを晴らして何になる。お前の主人が生まれ変わる訳でも、極楽浄土に行く訳でもない。永遠に阿鼻叫喚の闇の中。下手したら魔物になるのがおちよ。お前はそれが望みか?」

うなだれたまま、ゆきの言葉を聞いていた猫又だったが、


「確かに…今まで命奪った奴の中には良い人間も沢山いた。可愛い子供もいた。その子供も42才になったら命を奪った。主人が殺されたのが42だったから。段々何してるのか、判らなくなってきた。わしはどうしたら…」


「そうだな。もう復讐は終わりにするんだな。人間の世界も面白いぞ!奴ら寿命が少ない中で一生懸命今を楽しんでいる。どうじゃ?そんな人間と一緒に暮らして見るのも良いぞ。おっ、そうじゃ!うちの古本屋に来い!うちの主人は儂でも掴みどころが無いが、猫が一匹増えた所で無関心。うちに来い!人間界が好きになるぞ。」


「私は、あなた様を…滅する事を…」


「構わんぞ。隙があれば側でいつでも狙えば良い。儂も毎日退屈でな。」


「あ、有難うございます。もう人間への復讐は止めます。」

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