風雅堂異談
「さてと、そうと決まればお主のよりしろじゃな?この娘いかにする?」


「この子は、昨年両親を事故で亡くし、天涯孤独の身、丁度私の主人から数えて7代目に当たります。だから出来ればこのまま喫茶店で働かせてはやれないでしょうか?」


「因果応報、輪廻転生、人を呪わば穴2つ!やはり、お主に繋がる一族であったか?もうここで因果は断ち切らねばな。よし、とりあえず家に帰し、明日から今まで通り働くがよい。記憶は任せたぞ。」


「有難うございます。本当はとても明るい花の様な娘でございます。」


「さてと、もう夜も明ける。後はわしの主人に任せ、一足先に本屋に帰るか。」言うが早いか、ゆきは旋風のように飛び立つ。後を追うもう一つの風。


その頃、奥の部屋では布団を頭から被りごちゃ混ぜになったお経を唱えつつ川辺が震えていた。
先程から玄関付近では只ならぬ気配、猫の唸り声、決して出てはならないと優に言われたが、出る気もしない。もう、恐ろしいだけである。表が静まり返った。ふと、時計を見る。朝も6時である。
襖を僅かに開き、


「に、二代目、ゆ、優さん…」
か細く声掛ける。
< 14 / 32 >

この作品をシェア

pagetop