風雅堂異談
「う~ん。かなり状態悪いですね。それにこの手の本は需要があまりないし…
良いところ三百円」

「それはないじゃろう。それでは交通費にもならん。これは先祖代々受け継がれた本。それをだな、涙をのんでこうして売りに来たのに、おっそうじゃ!これも付けるぞ。」
そう言って、老人が取り出した物は、白い太ももが絡み合う写真。見えるか、見えないかの所で写真を引っ込める。


それを見た優。
「う、う~ん。良く見るとなかなかの逸品ですね。よし!思い切って千円!いや二千円で買いましょう!」


「よし!売った!」本を差し出し、代金を受け取ると、きびすを返す老人。


「お、おぃ。ちょちょっと。写真写真!」慌てて呼び止める優。


「おぉそうじゃった。あんたも好きね。」ウインクしながら写真を投げる老人。

写真を受け取り、辺りを見回し、写真を見る優。ドキドキ!そこに写っていたものは…
大相撲の取組!


「だ、騙された!」1人悲嘆にくれるが、老人は別に騙した訳でも何でもない。優がそう思い込んだだけである。
肩を落とし、買取った本をペラペラめくる。
「…何か、何かだな」めくるのを止め、売り場の一番目立たない所に本を置いたのは本能か?
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