風雅堂異談
その時、ゆきとうめが店に帰って来る。いつもの定位置に座ろうとしたゆき、店内を見回し、


『妖気が…気のせいか?ん、あの本は…はて、何故あんな本が…?この若旦那が仕入れる訳は無し…さては、妖しが置いて行ったか?まぁ本自体には害はないから良かろう。いずれ処分しておこう。』

どうやらゆきはこの本を知っているらしい。指定席に座り、うめに目配せし、あくびを一つ。眠りにつく。


そして、何事も無く2日が過ぎた。
その日は朝から、ゆきとうめは優の祖母からの呼び出しを受け留守である。


「いらっしゃいませ。」


久しぶりの客である。中年の高そうな衣服をまとった女性である。
「小汚い店ねぇ。此処には私の仕事の役に立つ本が結構あるって、マネージャーが言ってたけど…」

少し、むっとしながら優が答える。


「掃除は毎日してるんですが、何分古い建物で。で、仕事の本ですか?就職情報誌?」


「まぁ、あなた私を知らないの?私は最近テレビに引っ張りだこの霊能者!都碧よ!」


「すいません。テレビ見ないんで。」
本当に申し訳無さそうに優が答える。


「まぁいいわ。何か古書のたぐいは、どこにあるの?」

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