風雅堂異談
都が立ち去って、また元の静けさに包まれた風雅堂。


何事もなく3日が過ぎた。
いや、黒猫ゆきだけは、異端抄が店内から無くなっているのに気が付いていた。『ふむ、わしが処分する前に、売れてしもうたか。まぁあの本は持ち主選ぶからのぅ、いずれ帰ってくるか。』
意味深なゆきの言葉である。


「やっほ~」
脳天気な声を上げ、入って来たのは麗子である。


「あっ、麗子チャン、休憩?まだ頼まれた本は入ってないけど…」


「うん、休憩中!此処は落ち着くのよね。よっ!ゆきチャンうめチャン!元気してたか?」


二匹の頭を撫でる麗子。特にうめは元の宿主である麗子に甘える。宿主と言っても、麗子の家に住んでいた訳でなく、まさに麗子の体に入っていたのだが…


「あっ!優さん!都碧のサインがある。都碧が来たの?」


「麗子チャン知ってるの?変なおばちゃん。」


「もう!今テレビに引っ張りだこの有名人よ。都の霊視で切る!とか、見たことないの?私も見て欲しいのに!今度来たら教えてね。」


「ふ~んそうなんだ。ダイエットに悩むおばちゃんかと思った。」
関心無さそうに優が言う。


「あっ!そうだ。丁度今番組やってるよ。まってね。」
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