風雅堂異談
「お迎えにあがりました。」
中川が来る。


「お待ちしてました。参りましょう。」店のシャッターを降ろすと、中川の車に乗り込む優。その両脇には、祖母の用事を済まし帰って来たゆきとうめの霊体が付き従う。勿論中川には見えない。
やがて、一軒のマンションに到着する。

「ここの五階です。行きましょう。」


「あの~?御家族の方は?」


「都は1人暮らしです。お手伝いが居ますが朝と夜来るだけです。今は病院に行って貰ってます。」そう言うと中川は、エントランスで暗証番号でロックを解きエレベーターに優を促した。
やがて、五階に着く。五階のフロアには住居が2つ。その一つが都の部屋である。素速くゆきの霊体が反応する。うめに目配せし、フロア全体に結界を張る。
それを知ってか知らずか、優が…


「じゃ、行きますか。無人ならお茶もお菓子も出ませんねぇ。」
残念そうである。


中川が鍵を開けて、優を促す。
一歩足を踏み入れると、そこは霊感のない人間でもわかるようなよどんだ空間が広がる。


「う~ん、空気が悪いですね。とりあえず換気しないと…」そう言うと窓に近寄る優。


カーテンを開けると

…そこに、にぃーと笑う老人の顔が
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