風雅堂異談
麗子がゆきの頭を撫でようとした瞬間、ゆきは目を開き、麗子を牙を剥いて威嚇した。


「まぁ、怖い!ごめんね。起こすつもりは無かったのよ。」

そして、ペコリと御辞儀して、麗子は逃げる様に出ていった。


「ゆきちゃん、どうしたんだい?」


『ば~か、気付けよ。あれは、物の怪の類だぞ。特に目を見たら駄目だぞ!邪眼だ!』


優には、ゆきがにゃんにゃん言ってる様にしか聞こえない。

「駄目じゃないかぁ、ゆきちゃん。可愛い女の子と仲良くなるチャンスだったのに…サングラスが良く似合ってたなぁ。ランで働くのかぁ?明日から通おうかな。」


相変わらず、呑気なのかどうなのか…
ひとしきり、ゆきに注意すると読みかけの本に目を落とす優。


ゆきも目を瞑りながらも、先程の女の事を考えていた。


『うちの新しい主人にも困ったもんだ。私でも、この人の事はわからん?さて、さっきの奴、災いにならなければよいが、邪眼師の類か?まだ完全に物の怪とはなってはおらんが…今夜は結界を張っておこうか。』


眠りに戻るゆき。


また、ゆったりとした風雅堂の時間が過ぎていくのであった。


そして翌日。
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