風雅堂異談
優に襲い掛かろうとする影。


が…その影は見えない壁にぶつかる。


「くぅ~、結界か?これほどの結界張るとは…主は九尾か?口おしや…」


「ふん。偉そうに、百年早い。儂に刃向かうとは。」
ゆきの優が答える。その両眼はいつしかつり上がっている。いつの間に来たのか、うめである妖弧がゆきに問う。


「師匠、こやつ何者ですか?」
前回、ゆきに負けて以来、ゆきを師匠と呼ぶうめ。


「こやつか?こやつは本に付く妖しでな、名を怨爺と言う。本に魅入られし者の精気を喰らう。魅入られし者、一時的に六感が研ぎすまされ、霊能者のごとく振る舞う。しかしそれは怨爺の餌集めにしか過ぎぬ。この尾上家の先祖である法師が封印したはずなのだが、何者かが封印を解いたと思われる。しかし、数百年の年を経て、また尾上家に現れるとは因縁よの。」


「へぇ~そうなんですか?じゃ今回は私にお任せを…」
うめが言う。
そんなうめを押し留め、怨爺に向けゆきが問う。


「さて、いかにする。怨爺?大人しく封印に戻るか?それとも儂に滅ぼされるか?」


「くっくっっ、己が儂を滅ぼすと?笑止。あのくそ坊主とゆかりの者か。ならばここで死ぬるがよいわ!」
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